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歳差運動するM87ジェットの噴出口―巨大ブラックホールの「自転」を示す新たな証拠
2023年9月28日
理学部附属宇宙科学教育研究センター
中心に巨大ブラックホールを持つことで知られている楕円(だえん)銀河 M87 から噴出するジェットについて、過去 20 年以上にわたる観測で得られた多数の画像を分析した結果、ジェットが噴出する方向が約 11 年周期で変化していることが分かりました。
さらに観測結果を理論シミュレーションと比較した結果、巨大ブラックホールの自転が引き起こすジェットの歳差運動(首振り運動)に起因する現象であることが明らかになりました。M87 の巨大ブラックホールが自転していることを示すとともに、強力なジェットの発生にブラックホールの自転が深く関与していることを裏付ける成果です。
茨城大学理学部附属宇宙科学教育研究センターが運用を行なっている直径32メートルの電波望遠鏡も観測に参加したこの研究成果は、英国の総合科学ジャーナル「Nature」に2023年9月27日付で発表されました。
国立天文台 ニュース
EHT Japan プレスリリース
用語解説
VLBI
超長基線電波干渉計 (very long baseline interferometer)、もしくは、超長基線電波干渉法 (very long baseline interferometry) の略。
EAVN
東アジア VLBI ネットワーク (East Asian VLBI Network) の略。2023年9月時点で、日本、韓国、中国の合計 16 台の電波望遠鏡から構成されている。
EATING VLBI
地球規模 VLBI ネットワーク (East-Asia to Italy nearly global VLBI) の略。
2023年9月時点で、EAVN とイタリア3台 (Medicina-32m, Noto-32m, Sardinia-64m) 、ロシア3台 (Badary, Svetloe, Zelenchk) の電波望遠鏡から構成されている。
今回観測に参加したのは、日本の VERA (*5) 4台、茨城(日立32メートル)、韓国の KVN (*6) 3台、中国の Tianma-65m、Nanshan-26m、イタリアの Medicina-32m。
視力、角度分解能
視力1は、角度分解能1分角(= 0.0166... 度)に相当する。この 1/60 (= 0.000277... 度 [視力 60]) が角度分解能1秒角 (1 arc second) であり、
そのさらに 1/1000 (= 0.000000277... 度 = 1千万分の3度 [視力6万]) が角度分解能1ミリ秒角 (1 milli arc second = 1 mas) に相当する。
EATING VLBI では、さらに 1/3 程度 (0.3 mas、[視力20万]) の画像を得る事ができる。
VERA プロジェクト
国立天文台水沢VLBI観測所の
VLBI技術による電波位置天文学の探究 (VLBI Exploration of Radio Astrometry) の略
KVN
韓国の VLBI 観測ネットワーク (Korean VLBI Network) の略