2023年4月4日
理学部附属宇宙科学教育研究センター
6.7 GHz Class II メタノールメーザー (以下メタノールメーザー) は大質量星 (太陽の 8 倍程度よりも重い星) 形成領域でのみ検出されています。その中には周期的な強度変動を示すものが複数知られています。メタノールメーザーの周期的強度変動は形成中の大質量星近傍の変動現象を反映していると考えられ、その変動メカニズムを解明することは太陽程度の質量を持つ星と比べて形成過程の理解が不十分である大質量星の形成過程の解明に繋がると考えられています。我々茨城大学の研究チームでは、メタノールメーザーの周期変動現象を解明するために、日立 32 メートル電波望遠鏡を用いたメタノールメーザーのモニター観測を 10 年以上継続しています。
G5.900-0.340という大質量星近傍に存在するメタノールメーザーが、およそ 1260 日の周期で変動していることを発見しました。これまでに報告されているメタノールメーザーの最長周期は 668 日なので、およそ 2 倍の長周期を発見したことになります。変動の様子を調べた結果、周期変動は大質量星形成初期の脈動変光 (星が膨らみながら増光し、縮みながら減光すること) によって引き起こされた可能性があることがわかりました。今後、干渉計 (複数の電波望遠鏡で同じ天体を同時に観測することで、高い空間分解能を得る装置) での観測によりメタノールメーザーの変動の様子が詳細に捉えられ、大質量星の形成過程がさらに明らかになることが期待されます。
【報告者】田辺 義浩 (茨城大学 理学部附属宇宙科学教育研究センター研究員 [博士研究員])